低層住宅工事の安全を目指して  出典:2005年1月号(労働調査会)

●大阪住宅安全衛生協議会活動レポート
●全国安全交流会レポート


 木建現場など低層住宅工事における災害防止を推進する全国各地の協議会。地域に根ざした様々な取り組みは、今や住宅工事の安全を語る上で不可欠。本稿では、昨年12月2日に開催された「全国安全交流会」で報告された各地の協議会活動をレポートする。(編集部)

 12月2日、大阪・吹田市において全国各地の低層住宅における災害防止協議会の定期的な集まりである「全国安全交流会」が開催された。
 今回出席したのは、開催地である大阪を拠点とする大阪住宅安全衛生協議会をはじめ、全国低層住宅労務安全協議会(東京)、埼玉住宅工事安全協議会(埼玉)
加古川住宅工事労災防止協議会(兵庫)、三重県ハウジング安全協議会(三重)の各協議会。約80人の担当者がつめかけた。
 交流会は、大阪住宅安全衛生協議会の森利和会長(パナホーム(株)建設推進部
安全・労務グループ担当部長)のあいさつでスタート。森会長は、「きれい、気持ちいい、(また)来たい現場の新3K現場の1年間の総点検を」と、歳末を無事故・無災害で乗り切り、有終の美を飾ろうと参加者に訴えた。
 また、来賓として出席した大阪労働局の井上貴志安全課長は、「低層住宅建築工事では、協議会の発足により災害が大幅に減少している。これは全国的にも範となる活動の賜物」と語り、各協議会の日ごろの活動を高く評価した。

各地の協議会が活動報告
住宅業界の安全の着実な歩みが

 全国低層住宅労務安全協議会の後藤弘道会長(住友林業(株))は、同協会の活動を紹介しているホームページについて報告を行なった。
 ホームページには、協議会の歴史、主な活動、会員名簿などに加え、会員用と
して危険余地訓練シートを掲載している。シートは、建方・外装大工編、内装・大工編、外溝(基礎を含む)・解体工事編の3種類があり、作業員向け安全教育の資料としての活用が期待されている。
 なお、全国低層住宅労務安全協議会は、平成元年に発足した協議会で、その前身は低層住宅災害防止協議会の草分けである「新宿低層住宅労務安全研究会」。
 現在の主な活動は、
1.安全施行マニュアルの検討、関連法令の研究、災害事例の検討、安全設備や工具に関する研究や改善、環境に関する研究や改善などの各種研究
2.講習会の開催
3.安全パトロールの実施など。

 また、6つの分科会を編成し、積極的な活動を展開している。

 埼玉住宅工事安全協議会の新居健二会長(ボラス(株))は、広報誌「住安協だより」と「現場安全パトロール-優秀事例集」について報告した。
 住安協だよりは、同協議会の普及活動の一環として発行しているもので、各労働行政機関や関係団体などへ配布。また、優秀事例集は会員各社の優秀事例を取りまとめたもので、安全で快適な現場づくりへの活用が期待される。

 加古川住宅工事労災防協議会の活動については、まずその指導などに当たっている加古川労働基準監督署の多田優主任監督官が今後の活動方針や計画について説明した。
 多田氏は、「職人にプライドを持ってもらうために独自のマイスター制度などを検討したい。また、活動が単なる行事とならぬよう、長期的視野に立った計画的な施策が必要」。また、「協議会の独立性を高めたい」と語り、協議会の一層の活性化を目指したいとした。
 また、池内章会長((株)池内工務店)は、「現在、90社に声をかけ、研修会の開催を計画している」と語った。
安全パトロール
分科会
研究会発足とともに編成された歴史のある分科会。現場作業者の安全と快適な作業環境の形成を目指している。
教育分科会 ビデオ教材、小冊子の開発を手がける。とくに低層専門の視聴覚教材では、質、量ともにトップクラスを誇る。
研修分科会 現場従事者に対して、基本的な知識や新しい知識を、分りやすくかつ確実に習得させる機会の提供を基本スタンスに、体験型研修やセミナーの開催を行なっている。
講習分科会 会員企業傘下の職人らを対象に、足場や鉄骨、玉掛け、有機溶剤などの各種資格取得のための講習会を開催している。
産業廃棄物
分科会
産業廃棄物の適性処理、廃棄物の発生抑制、再資源化などを中心に、調査・研究を行なう。また、廃棄物関連の書籍の出版も手がける。
標識・機材研究
開発分科会
特にハード面を中心に、より安全な道具や機材の開発や、作業環境向上のための標識の研究などを行なう。

ユニークな活動を推進
住宅安全業界に新風を吹き込む
大阪住宅安全衛生協議会の取り組み


 今回の全国安全交流会のホスト役を務めた大阪住宅安全衛生協議会。
 平成5年、大阪地区に本社を構える住宅メーカーら数社により「安全活動の連絡会」として活動をスタートしたのがそもそもの始まり。平成7年には安全機材メーカーや足場施行会社などの住宅安全関係会社をもメンバーに加え、組織の拡大・強化を図り現在に至る。

 低層住宅業界の災害防止と環境美化を目的に掲げ、現在、37社が正会員として活動を展開中だ。

部会、委員会を中心に積極的な活動を展開

 同協議会では、「広報企画部会」「教育研修部会」「現場環境部会」「災害防止対策部会」の4部会を設けるとともに、「災害防止対策部会」の下に「対転落委員会」「電動工具委員会」「足場委員会」の3委員会を設け、それぞれ積極的な活動を展開している。
「広報企画部会(笹部泰正部会長/三洋ホームズ(株)」
 新規会員の加入促進と、安全衛生活動の目的を同じくする他の協議会との情報交換が主な活動。また、広報誌の発行を行なうとともに、現在はホームページの立ち上げを企画中だ。
「教育研修部会(江間國俊部会長/積水ハウス(株))」
 会長傘下の作業者の技能資格取得を推進。特に昨今は、コンプライアンス(法令遵守)に主眼を置き、各種作業主任者教育や雇入れ時教育、職長教育などに精力的に取り組んでいる。
今後、労働衛生についての研究も実施し、成果物につなげたいとしている。
「現場環境部会(玉水新吾部会長/エス・バイ・エル(株))」
 3年ほど前に設立された新しい部会。現場から排出される産業廃棄物の適性処理や減量化を測るための情報交換、現場パトロール、廃棄物処理場の見学会などを行なう。また、これまで30回を超える会合を重ね、夢を宅せる現場づくりを研究中だ。
「墜転落委員会(外村憲二委員長/ミサワホーム近畿(株))」
 墜落・転落災害防止を目的に、足場や脚立、はしごの災害事例などを元にした安全冊子の発行などを行なっている。
「電動工具委員会(米倉久博委員長/エス・バイ・エル(株))」
 電動工具災害防止ポスターや安全ビデオ(「魔の一瞬U/電動・エア工具編」)を製作し
協議会会員内外への啓蒙を図っている。また、工具メーカーと協力し、電動・エア工具安全推進者研修を開催し、各種電動工具の適性使用を進めて位いる。
「足場委員会(和田誠一委員長/(株)ダイサン)」
 足場先行工法の研修会の開催や、大阪府下の各労働基準監督署との合同パトロール、協議会合同の
パトロールなどを開催。現場の安全管理や設備の向上に取り組んでいる。

ユニークな講習会を開催
企画力、実行力を内外に示す


 墜転落委員会、電動工具委員会、足場委員会の3委員会は昨年11月19日、合同で「災害防止指導者講習会」を開催した。
 当日は約270人が参加し、前回(平成15年開催)同様の盛況となった。
 講習会では、特別講演の他、足場や電動工具、墜転落にかかる講義と実技教育が行なわれた。
 特に実技教育では、会場に足場を設置し、参加者が実際に自分の目で足場の安全設備の不備を探すという体験型の教育が実施され、同協議会のユニークな企画力、実行力を内外に見せつけた。
 また、同様に電動工具や墜転落についても、実際に工具の適性な使用法や脚立の昇降、保護帽の威力などが再現。参加者の耳目を集めた。
 発足10周年を迎えた同協議会。独自の視点で住宅安全業界に新風を吹き込み続ける同協議会への期待はますます高まるばかりだ。